児童思春期外来について
当クリニックではおおよそ10歳以上、18歳未満の方の外来を行います。ただこれらの年齢はあくまでも目安ですので、不登校、引きこもり、交友関係のトラブルなどご相談したいことがあれば、気軽に受診してください。
児童思春期の患者様は、生後から物心つかない時期の様子が診断に重要になりますので、その時の様子をご存知の家族と受診することが大変重要になります。可能であれば、母子手帳などをご持参いただくと、大変参考になります。ただ必ず受診は家族同伴ではなく、希望があれば、本人様だけ、家族だけでお話を聞く時間を設けることは可能ですので、ご相談ください。
児童思春期外来においては、一般外来以上に心理検査が重要となります。人格的にも未完成の場合もあり、診断に時間がかかる場合も少なくありません。受診してすぐに診断して治療するというよりは、本人の悩み事に寄り添っていく治療を目指します。治療方針も、患者様、患者様の家族に説明し、納得できる形で決めていきますが、薬物治療は成人の患者様以上に慎重に行います。そのため非薬物治療を優先する場合が多いですが、必要であれば薬物治療も考えていきますので、治療に関しての希望があれば、ご相談ください。
当院で対応可能な疾患
不登校
学校に行けないとき、まずは自宅で安心して元気に過ごせることを目標としましょう。
普段よりも子どもっぽくわがままもあるかもしれませんが、社会生活で頑張るための充電期間に良くみられる経過です。
生活リズムを整えること、雑談やお手伝いを通じて会話を増やすこと、食事を家族で食べることなどで身体的な安定を図る取り組みも有用です。
「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、お子さんの社会的自立を目指してゆくという視点が大切です。
勉強についてゆけない、集団活動でのトラブルが多い、強い不安や抑うつ、幻覚・妄想などがあるときは、こころの病気、発達の遅れ・偏りについてご相談いただくことをおすすめします。
適応障害
人間関係の困りごとや環境変化、忙しすぎたりプレッシャーを感じるときなど、心理社会的ストレスが強い状態が続くことにより身心の不調を来した時に、適応障害と診断されることがあります。
こころとからだが疲れたときのサインとして、気分の落ち込みやイライラ、不安、疲れやすさ、頭痛、腹痛、食欲低下など、様々な症状が現れることは自然な反応です。
また、お子さんの場合は、不登校、怠学、成績が下がる、規則を守れないなど、行動上の問題として現れやすいことにも注意が必要です。
休養や環境調整で負担を減らすことが第一で、改善が難しい場合には薬物療法を行うこともあります。
不安障害(社交不安、分離不安、小児の過剰不安など)
ある状況を怖がったり緊張したりすることは、一般的によくあることで異常ではなく、むしろ自らの安全を確保するための自然な反応ともいえますが、不安が強すぎて生活に支障が生じる場合に不安障害と診断されることがあります。
不安な気持ちに寄り添いながら段階的にできることを増やすなど、無理強いせずご本人が安全に過ごせる環境が大切です。
必要に応じて、薬物療法を行うことがあります。
強迫性障害
特定の考えが意図せず繰り返しこころに浮かんできて心配になったり(強迫観念)、何度も手を洗う、カギが閉まっているか確認する、数にこだわるなどの行動(強迫行為)を頻回に行ったり、やめたくて苦痛なのに長時間やめられず生活に支障が生じる場合に強迫性障害と診断されることがあります。
原因についてはまだ十分に解明されていませんが、体の問題(脳機能のメカニズム)やストレスなどが様々に関わりあっていると考えられています。
強迫行為への対応を相談したり(確認を繰り返すことや家族を巻き込むことで症状が悪化しやすい)、必要に応じて薬物療法を行います。
パニック障害
パニック発作は、特別な状況や環境に関係なく突然おこる動悸や息苦しさ、めまい、嘔気などの自律神経症状で、死んでしまうのではないかという強い恐怖感を伴うことがあります。誘因なく繰り返されることで「またおこるのではないか」と常に心配したり、発作のおきた状況や場所を避けることで、生活に大きな困難を伴います。
原因についてはまだ十分に解明されていませんが、心理的な要因(過去の体験など)だけでなく、体の問題(脳機能のメカニズム)や環境の問題(ストレス)などが様々に関わりあっていると考えられています。
必要に応じて薬物療法を行います。
自閉症スペクトラム障害 : Autism Spectrum Disorder(ASD)
ASDは、コミュニケーションがうまくできない、興味・感情を共感することが少ない、こだわりが強く、柔軟性に乏しいなどの特徴がみられます。これらは脳機能のアンバランスさから生じるものですが、マイペースな言動が周囲から誤解を受けたり、周囲とのなじめなさに生きづらさを感じることも少なくありません。
ご本人が過ごしやすい環境調整や特性に対する周囲の理解が手助けになります。
また、必要に応じて対症的に薬物療法を行うこともあります。
注意欠如・多動性障害 : Attention Deficit Hyperactivity Disorder(ADHD)
ADHDは、忘れもの・なくしものが多い、集中を続けることが難しく気が散りやすい、落ち着きがなく動きが多いなどの特徴がみられます。
これらは注意と行動制御に関する脳機能の特徴から生じるものですが、怠けや不真面目と誤解されたり指導・叱責されることで、自己肯定感の低下を来すことも少なくありません。
注意散漫になりにくい環境調整やご本人強みを生かすような周囲の理解が手助けになります。
また、必要に応じて薬物療法を行うこともありますのでご相談ください。
うつ病
毎日の生活のなかで、思うように物事が進まなかったり、つらい、悲しい気持ちになる出来事は誰にでもありますが、少しずつ前向きな気持ちを取り戻せるものです。ところが、何週間も一日中ずっと気分が落ち込んでいる、好きなことも楽しめない、食欲がない、眠れないといった状態が続いている場合、うつ病のはじまりかもしれません。
お子さんの場合は、気分の落ち込みよりもイライラした気分が目立つこともあります。
休養や環境調整で負担を減らすことが第一で、改善が難しい場合には薬物療法を行います。
躁うつ病(双極性感情障害)
躁うつ病は、うつ症状(気分の落ち込み、気力と活動性の減少)と躁症状(気分の高揚、気力と活動性の増大、社交性の増大、多弁、睡眠欲求の減少)を繰り返すことが特徴ですが、お子さんの躁うつ病では症状が典型的でない場合があり、気分や活動性の変動が短期間で頻回にみられたり、気分の落ち込みよりも易刺激性(イライラ)、情緒不安定、攻撃性、衝動性、焦燥感が目立つことがあります。
また、注意欠如・多動性障害や不安障害などの併存障害が多く、診断・治療が難しい場合も少なくありません。
治療はストレスや刺激を減らす環境調整と薬物療法が中心となります。